IoTデバイスの消費電力を測る基板

無線送信、センサーの読み出し、スリープ。 IoTデバイスの消費電流は、動作状態によって大きく変化します。 平均電流だけでなく、その変化を時系列で記録すると、どの処理がエネルギーを使っているのかを調べられます。

MCP3911 2チャンネル電圧/電流測定器は、二つの差動電圧を同時に測定する50 mm角の基板です。 電流は、外付けまたは基板上のシャント抵抗に生じる電圧から算出します。 基板上のOLEDで現在値を確認する方法と、USBでPCへ接続してWebブラウザに波形を記録する方法を選べます。

OLEDに2チャンネルの測定値を表示するMCP3911測定基板

OLED表示とWebブラウザによる記録・解析

使用方法できること
OLED表示2チャンネルの現在値を、PCなしでその場で確認する
WebブラウザUSBでPCへ接続し、波形の記録、統計、FFT、演算、CSV保存を行う

OLED表示だけで測定した波形は、基板内には保存されません。 時系列データが必要な場合は、測定前にWebブラウザを接続して記録を開始します。

Webダッシュボードはインストール不要で、デスクトップ版のChromeまたはEdgeから接続できます。 Android版Chrome向けのWebUSB接続も実装していますが、現時点では実機での動作を検証できていません。 iPhoneとiPadには対応していません。

2基の独立ADCによる2チャンネル同時変換

MCP3911は2基のADCを内蔵し、Channel 0とChannel 1を同じタイミングで変換します。 マルチプレクサで一つのADCを交互に使う方式ではないため、二つの波形を共通の時間軸で比較できます。

IoTデバイスの消費電力を測る場合は、一方で負荷電圧、もう一方でシャント抵抗の電圧降下を測定します。 ただし、一般的な3.3 Vまたは5 Vの電源電圧を本基板へ直接入力することはできません。 負荷電圧を既知の定数として扱うか、安全な入力範囲に収める外部分圧回路を使います。 測定できる電流範囲は、シャント抵抗の抵抗値、定格電力、許容損失によって決まります。

低周波オーディオ回路では、アンプやフィルターの入力と出力を同時に測定し、二つの波形の時間差を観測できます。 ダッシュボードは位相差を自動計算しないため、画面上で時間差を読むか、CSVへ保存して別途計算します。 サンプリング周波数は976.5625 Hzであり、一般的なオーディオ帯域全体の位相解析ではなく、低い周波数での比較を想定しています。

インストール不要の解析用Webダッシュボード

2チャンネルの波形と演算結果を表示したWebダッシュボード

Webダッシュボードを開く

Webダッシュボードには、次の機能があります。

  • 2チャンネルの時間波形表示
  • 最大値、最小値、平均値、Peak-to-peakの集計
  • 最大4096点のFFT
  • 任意の演算式と数値積分
  • 保持データ全体または選択範囲のCSV保存
  • 保存したCSVの再読み込みと再解析

ADCは常に976.5625 samples/sで動作し、表示用のSample rate設定に応じてUARTへ送るフレームを整数分周で間引きます。 受信処理とグラフ描画を分け、シリアルデータの受信を続けながら、画面更新を最大30 Hzに抑えています。

DDD基板規格に基づく50 mm角の基板

DDDでは、今後製作する基板の外形と取り付け位置を揃えるため、50 × 50 mm、角丸、直径3.2 mmの四隅の穴を基板規格としました。 穴の中心は、隣接する二辺からそれぞれ4 mmの位置です。 本基板は、この外形寸法と取付穴を採用する最初の公開作例です。 ただし、現在公開しているEAGLEデータでは角が直角のままであり、角丸外形は次回の基板改版で反映します。

主な仕様

項目仕様
ADCMCP3911、2基の独立ADCによる2チャンネル同時変換
ADC出力24-bit符号付き整数
差動入力範囲約−0.6~0.6 V
各入力端子の対GND範囲−1~1 V
MCLK / OSR16 MHz / 4096
変換速度976.5625 samples/s
電流測定シャント抵抗の電圧降下から算出。測定範囲は抵抗値と定格による
MCUSTM32C011F6
USBシリアルFT234XD、1,500,000 baud
デバイス表示128 × 64 OLED、I2C
バッテリー保護回路付き1セルLiPo
充電MCP73831、設定電流は公称約500 mA
基板50 × 50 mm、2層

入力は絶縁されていません。 差動入力範囲だけでなく、各入力端子の対GND範囲も守る必要があります。 商用電源や高電圧回路には接続できません。

LiPoバッテリーには、約500 mAの充電を許容する保護回路付き1セル品を使用し、コネクターの極性を接続前に確認してください。 また、MCP73831は品種によって充電終止電圧が異なるため、実装する型番を使用するバッテリーの仕様に合わせる必要があります。

回路、ファームウェア、ダッシュボードの公開

EAGLEの回路図と基板データ、STM32CubeIDE用ファームウェア、ReactとViteで作成したWebダッシュボードをMIT Licenseで公開しています。 通信フレーム、入力条件、ビルド方法もリポジトリにまとめました。