これは何?

デバッグ用リボンケーブルで PC と接続したデモ基板

8080  内部ビット可視化シミュレータ は、インテル 8080 CPU の ALU と主要レジスタを LED で丸ごと見える化 した学習ボードです。 1  クロックごとに “A レジスタ”“演算結果”“フラグ” などが即座に点灯し、8 bit CPU が今何をしているか を手に取るように追えます。

基板サイズは約 100 mm 角。USB 給電のみで動作し、PC から好きなマシン語プログラムを書き込むと、そのままステップ実行が可能です。6  月の NT 金沢 2025 に出展しました。

動機

  • 「レジスタやフラグって結局 0/1 になるだけでしょ?」を LED の点滅 で体験してもらいたい
  • 黒い IC の中身を覗けないもどかしさを解消し、CPU アーキテクチャを“感覚で”覚える教材
  • 8080 は Z80・8086 系列のルーツ。8 bit マイコンを学ぶ入口 として最適

システム構成

ブロック基板上の表示役割
ALU8 × LED加算・論理演算結果をリアルタイム表示
Accumulator8 × LEDA レジスタ内容
Register‑Array4 × LEDB/C/D/E… 汎用レジスタの上位 4 bit
Flag6 × LEDS/Z/P/AC/C/– 各フラグ
Program Counter2 × 7seg実行中アドレスを 16 進表示
ESP32PC とのブリッジ(プログラム書き込み・クロック制御)

上記ブロックは PPT のブロック図にほぼ対応しています。 基板自体は “表示専用” で、CPU の演算は ESP32 上で動作する 8080 シミュレータが担当。Verilog で記述した 8080 CPU を C にトランスコンパイルし、ESP32 で実行。出力信号だけを LED に配線しているため、配線は単純で作りやすく、かつ LED は猛烈に賑やかです。

8080 CPU シミュレータのシステム構成図とブロック図

使い方デモ

スライドに掲載した 11  ステップのデモプログラムでは、ロード/算術/論理/ローテート/メモリアクセスを一通り実行し、各ビットの遷移を観察できます。

  1. MOV B,AAH – B  レジスタに AA
  2. MOV A,55H – A に 55
  3. ADD B – A=FF
  4. ADI 01H – A=00, CY=1
  5. ORA B – A=AA
  6. RAL – A=55
  7. XRI FFH – A=AA
  8. ANI 3FH – A=2A
  9. STA 1000H – RAM へ保存
  10. ANI 00H – A=00
  11. LDA 1000H – RAM から読出し

LED を見ているだけで キャリーの伝播AND/OR のビットマスク がわかり、初学者への “なるほど体験” に最適でした。

展示風景と基板クローズアップ

NT 金沢 2025 出展

  • 小学生から古のエンジニアまで 幅広く立ち止まってくれ、「8080 って 50  年前の石でしょ!?」「バス線が光るの最高!」と大盛り上がり
  • 「命令追加できますか?」→ Verilog から生成されたソフトウェア実装なので今後のアップデートでほぼ無制限
  • 「Z80 版も見たい」→ 次回作候補です
設営直後のブース全景

今後の課題

  1. フル 8080 実装

    • 現状は ALU と主要レジスタのみ。アドレスバス 16 bit 全 LED 化を検討
  2. マイクロステップ表示

    • フェッチ/デコード/実行のサブサイクルを色で区別し、より深い観察を実現
  3. 教材パッケージ化

    • 組立キット+ワークブック+オンライン IDE を整備し、高校・高専教材へ展開

おわりに

CPU の内部はブラックボックスと言われがちですが、1  本 1  本の信号線こそがコンピュータの本質。 本ボードは「光るだけ」で終わらず、“見えるから分かる → 分かったら弄りたくなる” という学びの連鎖を引き起こします。

次は Z80 や 6502 でもっと派手に光らせたい!